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柑菜達が向かうのは、柑菜達が小さい頃からよく遊んでいた場所。
川沿いにある小さな児童公園。
もう古く寂れていて、ここには滅多に人が来ない。
しかし人ではない別の生き物がよく集まっている。
「おいでー」
公園に着いてすぐ、辺りを見渡しながら優しい声で何かを呼ぶ柑菜。
すると集まってくる数匹の猫達。
柑菜が地面に座り込めば膝の上に乗ったり、擦り寄って来たりととても可愛い。
「クスッ可愛いなー。はい優人」
「ありがと。よしよしよし」
1匹を優人に渡すと柑菜達は2人で猫達を愛でた。
「ねぇ、優人。もしもの話してもいい?」
「ん、いいよ。何?」
柑菜は撫でている猫の背から目線を逸らさずに話す。
「もし、もしもね…急にどこか遠くへ言ったら……急に私がいなくなったら…優人はどうする?」
いつもと雰囲気の違う柑菜に気付いてか、ピタリと動きが止まったのが気配で分かった。
「………なんで?」
やっと紡ぎだされた言葉には困惑と不安が乗せられていた。
そんな言葉を聞いても柑菜は視線を優人に向けなかった。
「最近夢を見るの。夢だからはっきりとは思いだせなかったけど、誰かに呼ばれているような夢。その夢を見た朝は必ず"行かなきゃいけない"って不安になる。」
そして、今朝の夢。
"もう時間がない、こっちに来てくれないと"という言葉。
どこか懐かしく包み込むような暖かさを持つその声がずっと頭から離れない。
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