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「私の勘がよく当たる事は優人もよく知っているでしょ?その勘が私に告げてるの"遠くに行くことになる"って」
実際はもう少し違う。もっと生々しい嫌な感覚…
そこまで思って柑菜はやっと顔を上げた。
優人に目線を向けるとその顔は悲しそうに歪んでいた。
「何か不安なことでもあった?それは夢、柑菜がいなくなるわけないよ!嫌なことがあったなら相談して?」
その時の優人の表情は信じたくないといっている風だった。
優人の大きな声に驚いて優人の膝に乗っていた猫が柑菜の方へ逃げて来た。
「うん。もしかしたら唯の夢かもしれないよね。でも、もしもそんな事が起きても優人は悲しまないでね?私、1番悲しむのは優人な気がする」
そう言って微笑んでも優人の顔は歪んだままだ。
「柑菜、僕は…」
何かを言おうとする優人。
しかし、その顔は優人自身何を言ったらいいかわからないという風に口を噤む。
「くす、優人はそろそろ私離れしなきゃね」
そう言って柑菜は優人の頭を撫でると立ち上がった。
勿論膝の上の猫はちゃんと降ろしてから。
「そろそろ帰ろう!お腹空いちゃった」
もうこの話は終わりと言うかのように柑菜は笑顔で話す。
「…分かった」
まだ納得していないような雰囲気を出しながらも、優人は微笑みを浮かべながら立ち上がった。
柑菜はその笑顔を見てホッと安心した。
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