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私の頭にある言葉が浮かんだ。
"通り魔連続傷害事件"
朝見たアナウンサーが言ってた格好ともピッタリ一致する。
「止めろ!!」
優人の声を聞いて女性への攻撃を止めた通り魔。
しかし、手に持った血塗れの刃物を私達…優人に向けて走りだす。
その距離、約5m。
優人はその時、"反応仕切れない"という優人にしてはらしくない失態を犯した。
柑菜の体が優人の方へ動いたのは無意識だった。
いつの間にか柑菜の視線の先は空だった。
お腹の辺りが熱いそれ以外何にも感じない。
体を動かすのが億劫な柑菜は気が付かないが、柑菜の周りには血だまりができていた。
「か…柑菜!!!!」
優人は柑菜に近づくと柑菜の体を抱きしめるように起こした。
苦しそうな柑菜を見て顔を歪めながら涙を流す。
また、この顔をさせてしまった。今度は涙まで…
これが柑菜がこの時思ったことだ。
柑菜の視界は少しずつぼやけ始めていた。
言いたいことを伝えるために口を開く。
「ゆうと?…優人は…ね…私に、とって…弟…みたいな、そんざ…いなんだ…よ?…だいじな…家族…だと、おもっ…てる。
ゆう…と…わたし…が…しぬ…のは…うんめい…だと…おもっ…て…る。わたし…は…だいじょ…ぶ…だから…しんぱ…しな…ケホッケホッ」
「もういい!もういいから!!」
優人が柑菜をギュッと抱きしめる。
柑菜の耳に優人が呼んだであろう救急車の音が届いた。
もう眼は霞んで殆ど見えない。
柑菜は手探りで優人の頬に手を添えた。
「だい…じな…おと…と…に…わら…て…ほし…い。ゆ…と…わら…て…いき…て?」
そこで柑菜の腕の力はスッと抜ける。
「か、かんな?柑菜っ!!」
柑菜は優人の声を聞きながら意識を落とした。
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