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葵の話を聞いたところ、職員室前ですれ違った先輩に一目惚れしてしまったらしい。
「前もこんなことがあったよな。俺がどんな思いでお前のお軽い恋愛につき合わされてきたことか」
その頃は……お前のこと、好きだったんだぞ。
「大体、お前は年上の先輩に弱いんだよ。何回一目惚れしたら気が済むんだよ」
「うるさいわね、今は今よ」
「で、そいつの名前は?」
「知らない」
「呆れたぜ、名前も知らない奴を好きになったのかよ」
「それが恋ってものなのよ。今日は昼ごはん抜きでもいい。あの人を探し出すまでは」
箱立葵はいつになく張り切っていた。
「ったく、どこからそんなエナジーが溢れる出してくるんだよ。俺はもう電池切れなんですケド」
白羽九武はいつも通り、張りのないため息をついてよろよろと階段を下りるのだった。
「それで、その運命の王子様の特徴は? 顔とか髪型とか、身長とかは?」
これは生死を分かつ問題だ。
俺のエネルギーが尽きる前に、葵の一目惚れの相手を探さなければならないのだ。
「うんとねー、顔はイケメンで~、髪型はイケてて~、身長は超高~いの。百九十センチはあるね」
「はあ、左様でございますか。他には?」
顔にイライラマークを貼りつけて、俺は質問を重ねる。
「あ、そうだ。携帯ストラップがズボンのポケットからはみ出てたんだけどね、アレなんて名前だっけ? ほら、あの六色のサイコロ型のオモチャ……キュービックルーブだっけ?」
「それを言うならルービックキューブだろ」
「そう、それそれ。一面が二マス×二マスの小さいのをつけてたのよ」
話しながら足を運んでいると、一階食堂についていた。
「やっぱり腹減ったわー」
「なんじゃそりゃ、ズコーッ」
俺は大げさに滑るフリをした。
「まあ俺もバッテリー切れ寸前だったから何か食べたいと思ってたところなんだけどさ」
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