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「折り癖を見たところ、君はかなり几帳面な性格のようだ。だがまだ折り方が洗練されていないな。今もポケットの中でなにやら折っているようだが……」
「気づいてたんだ」
「もしかして中指を切ったのか?」
「ちょ、超能力者ですか!?」
「超能力ではない。観察から導き出した推測だよ」
少女はポケットの膨らみから指の角度を計算していたらしかった。
世の中には凄い人がいるものだ。
「君はなかなかに面白い。うむ、素晴らしい」
一人でうなずく少女。
いや、僕はあなたほどではないですが。
「私はこれで失礼する。君とはまたどこかでめぐり会うような気がするよ」
そりゃ、どうも。
少女はきびすを返して体育館の出入り口へと向かう。
漫画のように格好良く人混みに紛れて消え去った……と思いきや注意散漫でよたよたと蛇行し、がっつりした大人の肩にぶつかった。
尻餅をついて倒れた拍子に、少女のポケットから羽がひとつながりになった「連鶴」が飛び出す。
しかも両側のポケットから。
手先が見えない状況で指の感覚だけを頼りに、しかも片手ずつ別々に折っていたなんて。
あれは同じ人間なのか?
少女は火中の栗を掴む修行をしているかのごとく、床に落ちた折り紙を素早く拾い上げていく。
「手伝うよ」
「ごほむ、私としたことが」
天才的な才能を持っているけど、意外とおっちょこちょいで不思議な少女だった。
そして僕と彼女はすれ違った。
いつかまた二人の折り目と折り目の交差点で再会するだろうという予感を胸の内に折り込んで。
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