2人が本棚に入れています
本棚に追加
(これは、もしかしたら神の啓示なのかもしれない。長年、世界に貢献してきた自分に対して、神が与えてくれたご褒美だ)
P博士は頭に浮かんだ発明品を、さっそく、造りだそうとした。だが、その前に手が止まった。本当に、この発明は自分だけが思いついたモノなのか不安になった。思いついたと思っていたのは、自分だけで他の人がすでに創り始めているのではないか。不安になったP博士は自分の情報網を使い、四方に手を伸ばして自分に授けられた発明の情報を集めることにした。
そして、結果はすぐに出た。もっとも意外な形で。
P博士だけが、授かったと思っていた発明のアイディアは、彼以外の人達も思いついていた。それも、大勢、いや、世界規模でだ。世界中の人間が同時に、この発明のアイディアが頭の中に浮かんでいた。理由など分からない、P博士と同じように雷をうけたような衝撃からアイディアが浮かんできたらしい。
これには、世界中のメディアも注目して騒ぎ立てた。今世紀最大の奇跡と称して。
ただ、不思議なことに全員、P博士と同じ発明を思いついたのにも関わらず、誰一人として設計図を書き残そうと思わなかった。理由は、全員が同じで鮮明な設計図が頭の中に浮かんでいたからだ。それを、わざわざ、図面に書き起こす必要などなかった。元々、アイディアを設計図に起こすという作業は、他の人でも分かるようにする為の作業であって、全員が全く同じ設計図を頭に思い浮かんでいるのならば、書き残す必要などなかった。そんなのは、一々、言葉を紙に書いて互いに会話し合うのと同じことだから。
意外な結果ではあったが、これはかえってP博士にとって都合が良い状況であった。彼の地位は、これまでにおける発明によってすでに、確立していた。あとは、自分が筆頭に立つことで発明を完成させればよかった。
こうして、世界中の人々が同時に思いついた、奇跡ともよべる発明は世界規模で創られることになった。まさに、人類史上最大級のプロジェクトだ。
最初のコメントを投稿しよう!