レベル弐

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ジョンの奇妙な妄想は、窮屈なカプセルを飛び出すほどに膨れ上がる。 「もし明日、メダリオンが人間に反逆し始めたらどうしよう」 ありがちなSF映画のような展開だ。 メダリオンの生態を考える限りでは、直接的に力に訴えて人間を支配下に置くような真似はしないだろう。 可能性としては、使用されることで人間社会の一部として紛れ込み、間接的に支配するかもしれないということだ。 いや、既に人類は間接的支配下にあると言ってもいいだろう。 人間は蛙と同レベルだ。 釜の中の水温が少しずつ上昇していることに気づかない。 果たして、いつまで井の中の蛙でいるのだろうか? 「もし明日、初号機が暴走したら」 休暇中に見た安っぽいパニック映画だ。 メダリオンが次々と暴走して人類を襲い、滅ぼそうとするのだ。 そうなる可能性はないとは言い切れないが、かなり低いだろう。 第一、メダリオンにはなんのメリットもない。 メダリオンが人類を無意味に殺戮しても、コインを投入してもらう機会を失い、さらには今まで貯めてきたコインのエネルギーまでも無駄に消費してしまうのだ。 人類はメダリオンの家畜である。 「もし明日、妻が浮気をしたら……。それは関係ねーか」 伸び放題の無精髭にポリポリと爪を立てる。 「メダリオンに乗りすぎてオカしくなっちゃったのかな、俺」 妻は女友達と遊びに行くと称して、昨日から自宅に帰っていない。 そんな家庭問題を抱えた家の扉の前に、初号機は到着した。
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