レベル参

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「ただいまー」 と言ったそばから、 「行ってきまーす」 と娘が通り過ぎてゆく。 「待てい。どこへ行く気だ、我が娘よ」 ジョンは後ろを見ずに片腕を伸ばし、娘の肩をつかむ。 「ちょっと伝説の黄金コインを求めてさすらいの旅に……」 「旅人よ、ハイヒールではさすらえん。あと服装の露出度高すぎ。パパは娘のナマ鎖骨なんて触りたくないんだな。ってえ?」 砕けるような鈍い音と共に、ジョン腕は逆回転する。 「マジでキモいからやめてくれる?」 そして娘はわざとらしく見せつけるように肩をはたき、扉を閉める。 「痛たた、ちょっと待って、一秒でいいから」 閉まりそうな扉に無理矢理駆け込んだ結果、負傷した側の手の指を五本まとめて挟んでしまったのだ。 「お前、自分のメダリオンは置いていくのか?」 「飛行スキル持ちの友達の機体に乗せてもらうからいい。あたしのはダサいから見せられないの」 「その友達の性染色体因子を言ってみろ。XX(女)か? XY(男)だろ! パパは認めません」 「絡み方がウザい。もう時間ないから行くね」 扉を強引に閉められ、家の中へ押し込められるジョン。 尻餅をついたと同時にポケットからコインがこぼれ出た。 一人残された家の中で、安っぽい金属音がこだまする。 「あ、それから」 再度開いた扉の向こうから娘の頭が飛び出した。 「ママもしばらく帰らないんだってー。伝説の黄金コインでも探しに行ってるんじゃない」 娘は鈍い笑顔で旅立って行った。 扉の隙間から漏れる細い光の筋が、ジョンの顔をむなしく照らす。
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