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民間用メダリオンの売却・販売から軍事用メダリオンの管理・研究を行っている企業。
それがヘヴンズドア社だ。
実績は連年業界第一位を誇り、国内の議会を乗っ取って実質的に政治の主導権までも握っている。
だが二代目社長レオンハルト・オイラーは、名は国を越えて轟けども一度としてマスコミの前に姿を晒したことはない。
「世界二十ヶ国語を自在に操れる」や「一日二時間しか睡眠を取っていない」など、謎多き人物として様々な噂が絶えないのだ。
中には「レオンハルト・オイラーは人為的に作り上げた架空の人物だ」と信じている者もいるほどだ。
「もうすぐじゃ。わしはこの時を待ち望んでおった」
レオンハルトは老人のような口調としわがれた声で言った。
だがその容姿は、いたいけな少女そのものだ。
首都中心にそびえる空中灯台の頂上で、少女はメダリオンの肩に腰かけている。
「莫大なエネルギーを詰め込んだ黄金のコイン……」
ピンク色のスカートとツインテールの黒髪が、風で嬉しそうにはためく。
これがヘヴンズドア社の現社長、レオンハルト・オイラーの真の姿なのだ。
「たった一枚でメダリオンを無制限に動かし続けることが可能なコイン。それは永遠のエネルギー。物理法則を無視した永久機関……」
弾かれたコインの行く末のように、表とも裏とも判別がつかない意味深な言葉。
メダリオンの背中からカプセルがせり上がる。
レオンハルトは専用メガネをかけてカプセルに体を入れた。
「ジョン・ネイピアをわしの元へ呼ぶのじゃ」
無線で外部に命令を飛ばす。
『ですが社長、顔を晒すことは……』
「構わん。わしは奴と直接話しておきたいのじゃ」
『は、はい。了解しました』
通信は終了した。
「これから楽しいことが始まるぞよ」
小さな手はコントローラーをうきうきと握りしめる。
「運命のコインは弾かれたのじゃ。いさかいを呼ぶ黄金のリンゴは、果たして誰の手に渡るのかのう? 行くぞ、メタトロン」
レオンハルトは機体の名を呼び、発進させた。
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