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「暑ぃ」
円形テーブルにだらしなく腰かけ、スーツの上着を脱いで隣のイスに放り出す。
「ああ、こいつ無しではやってらんねーよ」
そして注文したコーヒーをズーズーと音を立ててすすった。
「熱ぃ」
ジョンは飛び上がって身をのけ反らせ、イスごと後ろへ転倒する。
「ああ、やってらんねーよ」
舌が引火したように熱い。
アイスとホットを間違えて注文していたのだった。
普通なら立ち上る湯気で気がつきそうなものだが、緊張状態が解かれて注意散漫になっていたのだ。
よたよたと立ち上がると、目の前に男が立っていた。
「やあ。相変わらずだね、ネイピア君」
「ヘンリーか」
ばつの悪そうな顔をして、頭をポリポリと掻くジョン。
愛想よく笑みを浮かべる男の名はヘンリー・ブリッグス。
ヘヴンズドア社では、二人は同僚という関係だ。
「誰も思わないだろうね、まさか君が撃破数ナンバーワンのプレイヤーだなんて」
「あんたの嫌味な言い回しも、その超絶ルックスからは誰も想像しねーだろうな」
「嫌だなあ、誉めただけじゃないですか」
「はいはい、そういうことにしておいてやるよ」
ジョンは意地汚くコーヒーの最後の一滴をすすった。
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