レベル弐

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「メダリオンは本当に生物なんだろうか?」 メダリオン・ステーションの一角で、ヘンリーがぼそっと呟く。 「お前、毎日コイツらの中に入ってるくせに、コイツらのココロが分かんねーのかよ」 そう言って、ジョンは愛用の弐号機にキスをする。 「ただの無機質の機械じゃないか。精神論は認めないよ」 「メダリオンは本来、兵器じゃねえ。人間が勝手に兵器として利用してるんだ」 兵器以外の使用法についても同様のことが言える。 メダリオンはコインとは違い、人間が製造したものではない。 「百歩譲ってメダリオンがコインを食らう機械生命体と認めても、感情があるとはとても思えないな」 嫌味っぽく言い放つヘンリー。 「例えば植物って、ただそこに生えてるだけに見えるよな。全然動かねーし。でもさ、それでも立派な生物じゃん。よくよく観察してたら、結構可愛かったりするんだよねー」 「人間が人間以外のモノに勝手に愛着を覚え、あたかも感情があるように振る舞っているだけではないのかな? 子供の人形遊びと同じようにね」 「まあ、続きを聞けよ。植物って自分は動かなくても、鳥や昆虫なんかを利用して種とか花粉とかを運んでもらって種族を存続してるワケなんだよ」 「甘い蜜やら果実やらは取引材料ということか。メダリオンは人間に使用されることでコインを入れてもらっているわけか」 「コイツらが生物だとしたら、地球のそれとは根本から違うヘンな生き方だよなー。いろいろな星の知的生命体を利用してコインを貯め、レベルを上げ、スキルを得て……その後はどうなるんだろう? また突然、自分たちの星に帰ったりしたら、俺達はどうやって生きればいいんだろう?」 人類の文明はメダリオンに依存しきっている。 例えばもしも、いきなり弐号機が姿を消したとすれば、ジョンは明日からどうやって生活すればいいのだろうか。 彼には検討もつかなかった。 「メダリオンがいなくなる頃には、人類なんてとっくに絶滅しているさ。馬鹿な同士討ちでね」 ヘンリーは皮肉っぽく言う。 人類はメダリオンを利用しているつもりが、逆に利用されているのかもしれない。 半不死身の金属生命体。 「撃破」されるのはいつもプレイヤー側だ。 機体は敵味方関係なく回収して再利用される。 人類は働き蜂のように鋼の女王にコインを貢ぎ続けているのだろうか?
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