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「ほな、行ってきます」
それはまだ肌寒さの残る
2月の終わり。
家の玄関で俺、片桐耕介はいつものように妻ゆかりと2歳になったばかりの息子悠斗に見送られて会社に向かった。
「パパ、頑張ってね」
愛しい伴侶と愛息子に見送られ、マンションのエレベーターホールに向かう。
今日は金曜日、
本来であれば浮かれ気分のはず。
でも気分は晴れない。
1階まで下りるエレベーターで壁面の鏡に映った自分を見た時思わず深いため息が出た。
左側頭部にできた寝癖にである。
家から会社までは20kmほど。
車通勤をしている関係で30分ほどで到着する。
気分が晴れない俺の気持ちを表したかのような曇り空の下、俺はいつものように車を会社へと走らせた。
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