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「物語って残酷だよねー」
国語の時間に誰かが言った何気ない一言。それをきっかけに生徒達の私語が飛び交い、ある意味盛り上がりを見せた3時限目。
その言葉をガンガン推すキャピキャピ系女子軍団。
それに対して真っ向から否定する読書家のクラス委員長とその手下。
ただその場のノリで盛り上げるバカな男子グループ。
さらには、本当は円滑に授業を進めなければならないはずの教師まで議論に参加する始末。
――そんな議論に参加するわけもなく、提出期限が次の時間に迫った数学の宿題をしていた俺だが、到底その言葉を肯定することは出来なかった。
何故なら、
物語とは自らの世界観をアウトプットするための最高の媒体であり、作成段階では自身の精神的視野を広めることさえ出来るのだ!
そして何より、物語は作者の見たり聞いたりしてきた知識や人生経験を濃縮したものであり、読めば相手の生い立ちから今までがわかるという無敵のインフォメーションツールなのだ!!
さらには、物語は理想を具現化こそ出来ないものの、本の中に自分の思うがままの世界を描くことが出来る至高の趣味である!!!!
――というよくよく考えると自分でも若干引くような持論を、心の中で闘志全開で熱弁していたことを悔やみながら、昼休みを部室でプロットに向き合い過ごす俺、日野浦 幸樹。
誰に見せる訳でもなく、大賞に応募することもない単なる趣味に青春の1ページを燃やし続けること4 年。
「 完結させた作品数はなんとゼロ 」
だがしかし、地道にも磨き続けてきた俺の文才は恒星の如く光輝いているに違いない!!
「そしてまた、書ききれもしない大作のプロットへ不毛にも打ち込むのでしたー 」
「茶化すなよ!!」
地の文にまで干渉されたら、俺の存在意義がなくなるだろが。
机の前から俺のノートを覗きこみ、いたずらな笑みを浮かべているのは、一応うちの部員である蒼生 由奈だ。
「だって、ねぇ?」
「『ねぇ?』じゃない。案外こっちは真面目に書いてるんだよ」
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