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言葉が喉に引っ掛かって出てこない。
鼓動が早くなる。
カズミ先輩だ。
「マユじゃん、鐘なったよ」
「知ってます。先輩こそなんで屋上なんかに…」
カズミ先輩は何も言わずに私の隣に座った。
「空がきれいだな…」そう言うカズミ先輩は両手を伸ばして寂しそうに笑う。
「卒業、もうすぐですね…」
つられて寂しくなってしまう。
できればずっとこうしていたい。
同じ季節を繰り返してこんなに春が
来ないことを願ったのは初めてだ…。
ふと上から見た桜の木には微かだが
蕾がある。
あの桜が咲く頃にはもう先輩は…。
抑えていた想いが箱から、
溢れそうだった。
キーンコーンカーンコーン
本鈴が鳴った。
結果、先輩と授業をサボることになってしまった私は携帯を取り出した。
気付かれないようカメラをカズミ先輩に向けた。
カシャッ
カズミ先輩は気付いたようだが気にしなかった。
少しでも多く思い出を残したくて…。
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