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暗いくらい夜に奴らは集う。
「ようこそ、moonlitへ」
会員者に性別も国籍も前科さえをも問わない。
それはただひとりのオーナーが営む地下バーが繰り広げるお話。
カランと、静かな地下に響く鈴の音。それを聞いた金髪のバーテンダーがこちらを向く。と同時に嬉しそうに微笑んだ。
「よ、マスター」
「アンタが来るなんて久しぶりね」
「俺も忙しかったの」
普段は冴えない高校生をしながらもこの世を脅かす秘密警察という顔を持つ男、神崎月詩が苦笑しつつバーカウンターに腰掛ける。それをマスターと呼ばれた男は疑うように眉を潜め、磨き上げたグラス越しに彼を見た。
「ふぅん?こっちは随分と寂しい思いをさせられたんだけど」
「悪かったって」
「……ま、今夜次第ね」
「はいはい」
そんなマスターの無茶ぶりにまた苦笑し、月詩は床を蹴りるとくるりと回る椅子と共に一周して辺りを見回した。
相変わらず怖いほど静かなバー。それがいつも五月蝿い喧騒の中にいる彼には落ち着いた。
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