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「どーぞ」
しばらくして、ドアが開き、月詩が帰ってきた。しかもドアを開けて誰かを待っている。
「お、おじゃまします」
おずおずと入ってきた少年。まだ子供らしさが残る顔立ちをしていて、その小さな体は月詩と並ぶことによってより小さく見える。
「マスター。俺が上がるまでコイツ、ここに置いてもいい?」
「いいけど……そちらは?」
未だに月詩のうしろに回って隠れようとする星唄を覗くようにマスターは首を傾けて尋ねる。
月詩はそんな星唄の背中を押して、彼を一歩前に出させた。
「星唄。ごあいさつしな」
「あの…柏木星唄です。ご迷惑をおかけしてすいません」
余程人見知りが激しいらしい。
声を震わせながら頭を下げた。よく見れば涙目になっている。月詩はそれに察してやれと言わんばかりの目をして苦笑してる。
「ごめんな。コイツ、昔から人見知り激しくて」
「す、すいません」
月詩がさっき言っていた幼なじみがこの子なのか。とマスターは一人で納得するが、それを面白くなさそうな顔で見る者が一名。
「帰る」
「え?政宗、もう?」
「帰る!!」
カウンターに札を置くとそう言い張って出ていった。
再びバーが静まりかえる。
いつもの常連客が集まるのは大体夜10時。それまであと20分だというのに。
月詩は唖然とそれを眺めていた。
「星唄ちゃん、そんなところで立ってないでこっちにいらっしゃい。月詩はさっさと飲み物出してあげて」
「だってさ。ほら、座って」
「え!?」
何もなかったようにマスターはさっきまで政宗がいた席を叩いて星唄を呼び寄せる。月詩は彼の背中を押しながら席に座らせると自分はカウンターの向こう側に立った。
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