私だって、つらい。

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隣の家の玄関の扉を叩く。インターホンを押すとかそんな事は考えられなくて、とにかく誰かに助けを求めなければと焦っていた。 しかし、いくら叩いても返事が無い。やっとインターホンの存在に気付いて連打しても、反応が無い。 ミカは気が付いた。 返事が無いんじゃない。反応が無いんだ。 この家の中でも、自分の家の中と同じ事になっているのではないかと思うと、恐ろしくなって後ずさりをした。 呼吸が上手く出来ない。それでも何とか道路に出て走った。交番に行こうと考えたのだ。 しかしその道の途中でも、信じられない事が起こっていた。いや、それはすでに"起こり終わった事"だった。 道には沢山の人の影がある。 それが異常なのは、いくら混乱していても分かる事だった。 誰一人、動いていない。 誰一人、立っていない。 誰一人、生きていない。
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