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神様の雛飾り
比和(ひわ)の家には、雛飾りが2組ある。
どちらも旧家と言われる比和の家に昔から伝わっている大切なものだ。
今、比和は生後1ヶ月になる自分の娘を抱いて、実家の雛飾りを見ていた。
七段飾りの豪奢なそれは、12畳の和室に母と祖母の手で今年も飾られていた。
老齢の祖母は、今でも元気で曾孫の誕生をたいそう喜んでいる。
しかし、比和は複雑な気持ちだった。
それは、家の一番奥、最近までは祖母しか入れなかった、今では母が変わって掃除やお供え物をしている部屋にある、これと同じ雛飾りからくるものなのかもしれない。
そう、比和の家にはもう一つ雛飾りがある。
家の守り神様のための雛飾りが。
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