209人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねえ、なっちゃんは?何で死んじゃったの?もう起きないの?」
半べそをかきながら母にすがる比和の姿は、葬式に来ていた弔問客の涙を誘った。
やがて、初七日が過ぎ、その年の雛祭りも喪中の中で終わっていた。
祖母が奥の部屋の雛飾りを片付けているのを、比和は廊下から見ていた。
そして、内裏雛の女雛がそこにあるのに気づいた。
奈津が持ち出したはずのそれは、いつ戻されたのだろう。
それに、その女雛だけが随分と新しい。
顔もまだ幼いーーー
比和の中に、得体の知れない恐怖がずくり、と生まれた。
だが、比和はそれを祖母にも母にも言わなかった。
言ってしまったら、次は自分がーーー
最初のコメントを投稿しよう!