神様の雛飾り

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* * * 「イヤ!私のお雛様!!」 雛飾りの前で、幼い妹が駄々をこねている。 比和の妹の奈津(なつ)だ。 4歳になる奈津は、3つ上の姉と同じ物を別々にほしがった。 雛飾りもそうだ。 「なっちゃん。うちのお雛様はね、お姉ちゃんとなっちゃんの二人のものなのよ。」 母がなだめるも、妹の奈津はかんしゃくを起こして泣きわめいた。 「いやだぁぁ!なっちゃんもほしいの!同じのほしいの!なっちゃんだけのお雛様!」 大人しい比和は、困ってただ黙っているしかなかった。 「だって、おうちにはもう一つあるもん!あれちょうだい!なっちゃんにちょうだい!」 奈津が言っているのは、家の奥の部屋、姉妹はまだ廊下からしか中を見ることが許されない6畳間に飾られた雛飾りのことだった。
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