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「イヤ!私のお雛様!!」
雛飾りの前で、幼い妹が駄々をこねている。
比和の妹の奈津(なつ)だ。
4歳になる奈津は、3つ上の姉と同じ物を別々にほしがった。
雛飾りもそうだ。
「なっちゃん。うちのお雛様はね、お姉ちゃんとなっちゃんの二人のものなのよ。」
母がなだめるも、妹の奈津はかんしゃくを起こして泣きわめいた。
「いやだぁぁ!なっちゃんもほしいの!同じのほしいの!なっちゃんだけのお雛様!」
大人しい比和は、困ってただ黙っているしかなかった。
「だって、おうちにはもう一つあるもん!あれちょうだい!なっちゃんにちょうだい!」
奈津が言っているのは、家の奥の部屋、姉妹はまだ廊下からしか中を見ることが許されない6畳間に飾られた雛飾りのことだった。
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