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ついでにと机の上の砂糖菓子を貰いつつ、ガブリエルは疑問を感じた。部屋にかけてある時計は、まだ朝を示していた。
「……もう? 処刑は昼だよね」
処刑、というガブリエルの言葉に、メイメイが羽ペンの動きを止めた。メイゼルはガブリエルに奪われたヘッドフォンを首にかけると、再び大音量で音楽を流し始める。
「どこかの誰かさんが時間通りに来ないから、痺れを切らして出てっちゃったわ」
「……」
メイゼルは答えないと察したのであろうメイメイの言葉に、ガブリエルはため息を喉の奥で漏らす。
文句ならあの少年に言ってくれ。心の中で悪態を吐きつつ、ガブリエルは雑誌を閉じた。
「あの二人が勝手にか……ちょっと危ないかな?」
「大丈夫じゃねぇ? いくら何でも一人で行動するはずは」
メイゼルがそれ以上言葉を綴らせることはなかった。地上のバーの扉が乱暴に開かれる音が聞こえ、人の奇声が響き渡ってきた。
「ダ、ダンピールだっ! ダンピールが町中で暴れ回ってるぞ!」
「……」
地上から聞こえた声に、三人は顔を見合わせる。その顔に浮かんでいるのは、三人とも「あーあ」という言葉だ。
「誰かさんが来るのが遅かったから、あの二人が暴れちゃってるかもよ?」
盛大なため息と共に吐き出されたメイゼルの愚痴を背中に受けながら、ガブリエルはソファーから立ち上がった。
「今度ジュース奢る……」
あの少年に請求書を叩きつけてやりたいと思いながら、ガブリエルは地下室の扉を開く。ここのジュース幾らだったかな、と考えながら、大声が聞こえてきた方向であるバーへ向かう。
本当に暴れているのが彼らの仲間なのかと言うことをきちんと確認しなければならない。もし本当に彼らの仲間ならば止めなければならないからだ。
荒れ果てたままのバーに入ると、二人の人影の姿をガブリエルの瞳は捉えた。一人はこのバーのバーテンダー、そしてもう一人はその彼と知り合いらしい男。
バーに駆け込んできた男は、突然現れたガブリエル達など気にもせず、息を切らしながらバーテンダーに掴みかかっている。
「あ、あいつらから銃弾を受けたんだよ!」
「あいつら……? 複数なのか」
バーテンダーの言葉に、男は首を盛大に振って肯定の意を示す。左腕には確かに銃創があり、服には血が滲んでいた。
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