Ⅰ 貴方は血を流す猫に会います。

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「何故ダンピールだと? 見掛けでは判断できないでしょう」  尤もな疑問を遅れてやってきたメイメイが投げ掛けると、男は怯えた表情をこちらに向けた。余程恐い目にあったようだ。 「あいつら……何回攻撃されようと全然死なないんだよ! 聖水だって効きやしない!」 「……つまり、貴方が適当にダンピールと判断しただけってことね」  はぁ、と大袈裟にため息をついてメイメイが呆れたように肩を竦める。が、そんな彼女の反応になど構っていられないようで、男は呻き声をあげた。  腕の傷の出血が止まらないようだ。このまま放置して話をするのは無理だろう。ガブリエルと同じくそう悟ったらしいバーテンダーはふらつく男の脇に腕を差し込み、体を支える。 「取り敢えず手当てをしよう。お前らも下に避難して……っておい、どこにいく!」 「少し拾い物をしに」  バーのガラス扉に手をかけながら、ガブリエルは指を四本立てる。意味が理解できなかったらしいバーテンダーは、怪我人の男を支えながら眉を顰めている。 「帰ってくるまでに、ジュース四つ下に運んどいて」  ダンピールが暴れていると言われたばかりなのに、一切気にも止めず外に出ていくガブリエル達に、バーテンダー達も言葉を失ったようで、引き留められるはなかった。  外に出たガブリエルを追ってきたメイゼルは、すたすたと歩いていくガブリエルを追い掛けながら疑問を口にした。 「何で四つなんだよ? 俺にメイメイ、あいつら二人とガブリエルをあわせて五つだろ?」 「今月ピンチなの」  メイゼルの問いに冷静に返しつつ、今月の残金を考えながらガブリエルは町中へと向かう。 「町で暴れている複数人のダンピールらしき人物……あの二人かしら?」  先程バーで男から聞いた話を信じきれていないようで、メイメイが首をかしげる。確かに自分の知り合いが考えなしとも言える行動を行っているとは考えがたいだろう。 「そうだと思うよ? 多分あの二人だ。違うと考えるにはタイミングが良すぎるし。それに形振り構わない……というか考えなしな破壊行為を行うのはあの二人くらいだから」  確かに、と二人が呟くのを背中で聞きながら、ガブリエルは歩みを止めない。  先程から三人が【あの二人】と言っているのは、本当はバーで落ち合うはずだった仲間のことだ。メイメイ達の話を聞く限り、勝手に行動してしまったらしい。
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