Ⅰ 貴方は血を流す猫に会います。

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 その二人を早く掴まえないと、ガブリエル達の【本来の計画】に大きく支障が出る。  ダンピールだと疑われていると言うことは、その二人が殺されてしまう可能性もあるのだ。勝手に行動するのは良いとして、今暴れたことで処刑場を変えられたり、内密に行われることは避けたい。  そして勿論、二人が死ぬような自体になることも。  バーから離れた下町の中心部は、先程の光景とはかけ離れた凄惨な光景が広がっていた。辺り構わず撃ち放たれたのだろう弾丸が多くの家々の外壁を削り、酷いところでは窓ガラスが割れている。  そしてその光景をより酷く際立たせて見せるのは、逃げ惑う人々と、飛び散る火花や銃声。いくら無法地帯に近いとは言えど、これは酷い。  下手をすれば死者が出てしまうのではないだろうか? 「いくら一番外れとはいえ、王都で暴れるのは感心できないわね。しかもとっても煩いわ、ガブリエルの猫耳が垂れ下がってきちゃった」  一足遅れて出てきたメイメイは、バーから勝手に持ち出したのであろう瓶の中身を飲み干していく。 「耳四つあるからな、コイツ」  そこらかしこから上がる悲鳴はどれもこれも耳に響く。騒音に耐えかねたように猫耳が垂れている理由は、ガブリエルが煩さに耐え兼ねてフードごと耳を押さえているからだ。 「まずは悲鳴が多く上がってる広場に行こうぜ。あそこなら見つけやすいし、多分一人はそっちにいる」 「そうね。……ガブリエル、大丈夫? お兄様の言葉、聞いてたかしら?」  耳を押さえてガタガタと縮こまるガブリエルを見て、メイメイがメイゼルに問う。メイゼルはさぁね、と呟き、肩を竦めた。  暫く動かなかったガブリエルだが、段々悲鳴が耳に馴染んでくる。兄妹が飽きて欠伸をしかけ始めたころ、ようやくガブリエルは復活した。 「広場にいくぞー、ガブ」 「……うん」  未だに痛む耳を押さえながら、ガブリエルは広場に向かう。逃げる人々とは逆方向に歩く三人を怪訝に思いつつも、皆命が惜しいようで振り向きもせずに走り抜けていく。 「銃は……彼処からだわ」  広場に行き着くより先に、メイメイが教会の上を指差した。言われてみれば確かに、四方八方に広がる銃弾はあの教会から来ている。  彼女はとても洞察力が良く、また目がいい。もう片方の目も無事であれば、更に遠くからでも判別出来たろうに。
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