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それは兎も角として、あの場所にガブリエル達が目的とする人物がいることは分かった。自分が行くか兄妹に行かせるか迷ったが、この二人を戦場宛らの場所に行かせるのは止めておいた方が良いだろう。
本来の目的を忘れて二人も暴れてしまう可能性がある。
「メイメイ、メイゼル。二人はあっちに行って」
故にガブリエルは、二人には教会に行って貰うことに決めた。教会の方から攻撃を仕掛けるには少々面倒だろうし、客観的に状況を見続けたままなら彼らも暴走することはないはずだ。
「分かった。あいつは早いとこ止めとく。行くよ、メイメイ」
「ええ」
指示を素直に聞き入れた二人は、迷わずに教会への道をかけていく。あの二人に任せておけば、あちらは大丈夫だろう。
問題は広場から聞こえてくる悲鳴。その悲鳴の発信源をとっちめなくてはならない。
ガブリエルが再び歩き始めると、幼い少女が泣きながら走ってくる。少女は足を縺れさせて転んでしまうが、自分のことに必死な大人たちは助けようともしない。
もみくちゃにされてなかなか立ち上がれない少女を見かねたガブリエルは、脇に手をいれて助け起こす。
「気を付けて」
「う、うん……ありがとう、猫さん」
……猫さん。
この上着を着ていると猫というのが定着しそうだな、と考えながら、ガブリエルは立ち上がる。少女が逃げていく姿を見守ってから、広場の方向を見据える。
「さて……もう一人頭が転んじゃってるやつを止めないと」
押し寄せてくる人々の群れに疲れたガブリエルは、並外れた脚力で塀の上に飛び乗る。そして塀の上を走り、広場へ向かう。
この緊急事態で塀の上を走る人はいなかったため、あっさりと走り抜けたガブリエルは広場に辿り着いた。
普段は人々の憩いの場として成立しているのであろう大きな広場は半狂乱状況で、懸命に立ち向かう人々をたった一人の人物が蹴散らしていた。
上からの援護射撃があるとはいえ、たった一人に歯が立っていない理由はただ一つだ。
暴れている張本人が弱点を一つしか持たないダンピールだから。
だが、ガブリエルとは違って確証を得ていない人々は、自分の攻撃が効かない相手に愕然としていた。
「おいおいマジかよ……こんな小娘一人だぞ?」
野次馬に混じって成り行きを見守っていたガブリエルの耳に、そんな言葉が聞こえてきた。
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