Ⅰ 貴方は血を流す猫に会います。

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「ダリベア、おいで」 「? あ、もしかしてジャンプするの? やったぁ!!」  だから楽しんでる場合かって。悪態をつきたくなりながらも嬉々として駆け寄ってくるダリベアをみると、どうしても毒を吐けない自分の不甲斐なさにガブリエルはがっかりした。  ダリベアが近くに寄ってきたので少し屈む。ダリベアがちゃんと首に手を回したのを確認すると、ガブリエルは彼女の足を左腕で抱え込んだ。  そして殺気だっている集団が今にも襲い掛かってきそうなことを感じ取りながら、ガブリエルは足に力をいれる。 「な、何なんだあいつらっ……!」 「構わねぇ、二人纏めてやっちまえ!!」  物騒な声が聞こえたのでさっさと退却しようと考えたガブリエルは、足の力を解放した。ガブリエルはダリベアを抱えているというのに、まるで本物の猫のように飛び上がると、近くの街灯に飛び乗る。 「っとと」  人を抱えての跳躍はあまりしないため、バランスを崩しそうになる。ダリベアが耳元でわぁっ、と、怖いのか楽しんでいるのか判別不能な声を上げた。 「教会は……あっちか」  メイメイ達が向かっただろう教会は、少し高い位置に登ればすぐ見えた。人影は見当たらないが、射撃が止んでいることを考えると、物陰に隠れているのだろう。 「さて、と……っ、うわっ!?」  教会に跳び移ろうと再び足に力をいれると、突然体が大きく揺れた。乗っている街灯が、揺れたのだ。 「降りてこい、穢れども!!」 「社会のゴミめ!!」  下から野次が飛んでくると同時に、街灯に体当たりするものが現れた。ぐらぐらと揺れて不安定だが、この程度なら問題はない。 「もーっ、鬱陶しいなぁ。ダリベアが落ちて傘でぐさっと刺してこようか?」 「頼むからじっとしてて」  どちらかと言うと問題はダリベアの方だった。今にも飛び降りそうなダリベアを諌め、ガブリエルは教会に狙いを定めると飛び上がる。  幾つかの街灯を経由し、ガブリエルは教会の屋根へ跳び移る。ダリベアは教会につくとガブリエルから飛び降り、教会の中心に高々と掲げられている十字架に飛び乗った。 「ここに三人がいるはずなんだけど」 「ガブリエル君、下、下」  十字架に手をかけて落ちないようにしながら辺りを見回していたガブリエルは、ダリベアに指差された下を見た。
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