52人が本棚に入れています
本棚に追加
「ヘイデン、それ仕舞って」
ガブリエルにヘイデンと呼ばれた少年は此方を見上げると、素直に銃を解体していく。手慣れた手つきで銃を解体し終わると、少年はバックを開いた。
ウサギの耳と悪魔の黒い羽と尻尾がついた、なんとも格好に似合わない小さめのリュックだ。中にはロリポップ・キャンディが大量に詰め込まれており、その上に少年は当たり前のように銃を詰め込んでいく。
少年の名前はヘイデンスタム。名前が長いのでヘイデンと呼ばれている。遠距離射撃を得意とする生粋の暗殺者で、このメンバーの中で唯一元から戦場と縁のあった人物だ。
ガブリエルの命令は必ず聞くヘイデンだが、裏を返せば他の面子の話は全く聞かない。扱いやすいのか扱いにくいのかよくわからない。
何はともあれ、これでガブリエルの仲間は全て揃った。
メイメイ。
メイゼル。
ダリベア。
ヘイデンスタム。
そしてガブリエル。この五人が、巷で噂されているダンピールの集団なのだ。
彼らの目的は二つ。
殺されかけたり、理不尽な暴力下に晒されているダンピールを救い、保護すること。
そして、この世界・【パロウベク】のどこかに存在すると言う、汚れを抜き取り純血を作り上げると言う薔薇の棘を探すこと。その棘は王都【グアダルペ】の双子城にあるという。
処刑を阻んだ上で、一番の目的である【純血】になる。それがガブリエル達が王都に訪れた理由だ。
ただ一人、ガブリエルだけは違う目的を持っているが。
ここにいるメンバーは皆、ガブリエルが以前助けた面子。故に彼に従ってついてきてくれるし、チームワークが滅茶苦茶でも分裂する恐れはない。
「で、どうすんの、これから。処刑まではあと三時間くらいあるけど」
ガブリエルが面々の顔を眺めていると、メイゼルがアンティーク調の腕時計を見ながら言った。メイメイはダリベアにくっつかれたまま首を伸ばし、メイゼルの時計を見る。
「誰かさんが騒いだせいで、変動があるかも知れないわね? ダンピールだとバレちゃったみたいだし?」
メイメイの言う通りだ。ダンピールを処刑する場が開かれると言うのに、そのダンピールが公共の場で騒いで何もない訳がない。
「引き伸ばされるか、最悪牢獄内で処刑されるか。どちらにせよ此方に不利になることは明らか……だ」
ガブリエルが呟くと、メイゼルが頷く。
最初のコメントを投稿しよう!