Ⅰ 貴方は血を流す猫に会います。

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「ガブリエルの言う通りだぜ。ったく、軽率なヤツが二匹もいるから……一般人を襲ったって処刑を止められるわけがないだろ」  メイゼルが袖を元に戻しながら吐き捨てるように言い、ダリベアとヘイデンを睨み付けた。睨み付けられたダリベアは、メイメイの影に隠れて萎縮してしまう。 「ご、ごめんなさぁい……」  萎縮して縮こまるダリベアの頭をメイメイが撫でる。メイゼルが追及したかったのもダリベアでは無かったらしく、彼はダリベアから直ぐに目を逸らした。  向かった先は、新たなロリポップ・キャンディの袋を破って口に運んでいるヘイデン。 「……何」  視線が集まっていることに気づいたヘイデンが、漸く口を開いた。その瞬間に飴を噛み砕いてしまったらしく、棒を取り出すとまた新たな飴を取り出した。 「何、じゃねぇよっ!? お前のせいで面倒なことになっちまっただろ!!」  兎に角ヘイデンが気に入らないらしく、メイゼルが食って掛かる。そんなに怒鳴らなくても、と思ったが、今ガブリエルが何を言っても煩いと一喝される気がする。 「っせぇーな……」  突っ掛かってくるメイゼルの姿を見ることすらなく、ヘイデンは飴を噛み砕いた。こんなペースで食べていては、幾らリュック一杯に持っていても足りない気がする。 「なんだと!? 誰がうるさいだよっ!!」 「お兄様以外にいないでしょう……」  今にも掴みかからんばかりの勢いでヘイデンに怒鳴りかかるメイゼルを見て、メイメイがため息をついた。 「ガブリエル」  メイゼルには目もくれず、ヘイデンはガブリエルに目を向けて手を伸ばしてきた。まさか飴のゴミでも押し付けられるのではないかとビクビクしながら遠くから手を差し出すと、睨まれてしまった。  仕方ないのできちんと手を差し出すと、ヘイデンはガブリエルの手に紙を手渡してくる。飴の袋の滑らかな感触とは違い、本物の紙だ。  受け取った紙を開くと、ダリベアを引き摺ってメイメイが覗き込んできた。  強く握りしめていた為か手汗による歪みの目立つしわくちゃな紙で、銃弾の焼け焦げた痕と掠れた血の痕がある。 「これは? ってか何で血?」  教会の上からずっと銃を連射していたのに、何故血がついている紙を持っているのだろう。気になってヘイデンの顔を見ると、彼の頬と首筋に血の掠れた黒い痕が見れた。黒いのでわかりにくいが、服にも血が散っている可能性がある。
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