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そんなガブリエルの努力など全く意に返さず、そもそもこちらの反応など気にもしていない少年の姿に若干イラッとしつつ、ダンピールという選択肢はないのだな、と思いながら袖を捲る。
ガブリエルの服が無くなった荒れて汚れている肌の上に、無数の黒い筋と番号、簡単に言えばバーコードが刻まれている。
番号は444444。
「末尾が偶数は人間」
番号を見て怪訝な表情をする少年に、ガブリエルは補則説明をする。少年は成る程、と大袈裟に声をあげ、自身の袖を捲った。
ガブリエルとは違い、苦労知らずを思い浮かばせる白い滑らかな肌に、まるで傷のようなバーコードが姿を表す。
「俺様は奇数だ!」
ヴァンパイアですと言えばいいのに。
バーコードをこれ見よがしに向けられたガブリエルは困ったなと思う。
「先程処刑という言葉が聞こえたが、ダンピールとは消さねばならぬ存在なのだな?」
「世間一般的状況に置いては、ね」
そもそも、共存してる時点で無理だと思うけれど。というガブリエルの考えは胸の中に仕舞い込みながら答えた。
ただ何気ない言葉のつもりだったのだが、少年は立ち止まってしまう。
「世間一般には……ということは、別の方法もあるのか?」
……。
流石貴族の子。まさかこんな些細な発言で気付いてしまうとは。心無し緊張し、唇が乾いたガブリエルは唇を舐める。
「あるにはあるらしいよ。伝説的なもので、ダンピール達の希望を求める声が勝手に作り出した盲信だと言われてるけど」
その伝説について明言するつもりはない。
ダンピールが【純血】と呼ばれる人間やヴァンパイアになれるという、信じるにはあまりにも愚かしい伝説についてなど。
「そうか。ならば考慮する必要性はないな。やつらはどうやって殺せばいいのだ? 我らヴァンパイアのように強い太陽を浴びたり、十字架や聖水に触れることか? それとも人間のように、物理攻撃で……」
長々と思い付いた方法を口にする少年だが、どれも的外れなものだったため、ガブリエルは首を横に振る。
数十と殺害方法を述べていた少年だが、予測もつかないようで、首を横に深く傾けた。
このままではらちが明かない。かといって答えを言えば間違いなく機嫌を損ねるだろうし、ヒントでも言っておこうか。
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