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二人に連れて行かれたのは、昨日褌姿の男達が血を洗い流す為に水浴びをしていた井戸だった。
地面に吸い取りきれないほどの水を使用したらしく、足元はぬかるんで小さな水溜まりが其処此処にある。
「やだなぁ…汚いよ…」
汲み上げてくれた水を古びた桶に移され、じっと見つめた。
「そう言われてもなぁ…」
「慣れるしかねぇな、細けぇとこまでお前に合わせてやれねぇよ。」
昨日とは打って変わって、左之さんが冷たいような気がした。
あたしが我が儘なの?
「…わかってるよ!」
着物に飛び散るほど何度も激しく顔を擦り、ふるふると犬みたいに頭を振った。
「ほら平助、これ使え。」
「…いらない。」
差し出された手ぬぐいは掴まず、左之さんの横を擦り抜けた。
「おいっ、どこ行くんだ!?」
「散歩。」
昨日は暗くて良く見えなかった屋敷の全容が見える。
幾つかに分けられた広い庭を探検していると、井戸は五つもあり敷地内は建物だらけだった。
そして当然むっさい男もいっぱいな訳で…
「あ、藤堂組、長…?…おはようございます。」
「…その髪の色……ゴホッいえ、身体はもういいんですか?」
声をかける人達は、大抵皆こんな感じ。
「あー…まぁ、これが地毛なんだ。驚かせてゴメンね?身体も心配ないよ、ありがとう。」
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