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天を仰ぎ、首を捻り、近眼のように眉をしかめる。
…誰だったっけ?
こっちに来てからいっぺんに色んな人に会ったから、幹部以外はあんまり覚えてないんだよねぇ。
斜め上をジイーーーッと見つめた。
…綺麗な顔立ちだなぁ。
ドコで見たんだっけ?
長い時間黙り込んでいたからか、
「…何?惚れた?」
相手は見下ろしながらニヤリと笑った。
「惚れ!?んな訳あるか!」
あたしは思い出せないのに、この人はあたしを覚えてる。
…隊士?
いやいや、隊士の人達はこんな風にフレンドリーな話し掛け方はしない。
いつまでも難しい顔をしていたからか、男は呆れてヒントを出した。
「今日は勇ましい格好をしてるんだね。あの変な着物はもう着ないの?」
それはあたしがこっちに来た時に着ていた洋服の事だ。
もしかして…
「ねぇ、あんた…昨日、池田屋に、いた?」
じわりと手が汗ばむ。
辺りを見て山崎さん達を捜すけど、完全に逸れてしまった。
どうしよう、思い出しちゃった…
途端にぷるっと震える正直な身体。
「やだなぁ、今頃?」
、
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