奇跡は突然やって来る。

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距離が近付くにつれ暑さでダラダラの汗が、一瞬で全身冷や汗に変わる。 対照的に迫る男は不敵な笑みを浮かべて皆を牽制しながら近付き、あたしを見て不思議そうな顔をした。 「お前…新撰組の仲間?」 以外に普通の声で尋ねられて、あたしの身体の緊張が少し解けた。 緊迫した空気なんだけど、ジロジロと恥ずかしくなるくらい見つめて来るのは、絶対あたしの洋服のせいだと思う。 「仲間って……違うよ。だってあたしは」 「平助!?」 「余計な事喋んなっ!」 答えようとしたら、助けてくれた二人が叫ぶ。 しかも険しい顔して、あたしを睨むし。 もう一言も話せずに、生唾をゴクンと飲み込んだら、敵の男がちょっとだけ笑った。 「まぁいいよ。その珍しい格好に免じて斬らないであげる。女を斬る趣味もないしね。」 そう言うと、抱えてた男をあたしに投げ付けた。 「ぎゃわっ!?」 受け止めきれるハズもなく、後ろに倒れて男の下敷きになった。 「平助!!」 「総司っ!」 「大事ないか!?」 羽織り仲間の三人が駆け寄ろうとしたら、敵の男は身軽に何もない窓から屋根へ飛び出してた。 「またね。」 爽やかな笑顔で手を振って。
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