色魔退散!

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「しつこいな!何でもないって言ってんじゃん!!放っとけっつーのっ!」 「平助!待って下さい!!」 尚も伸びてくる手を振り払って、暗くなり始めた道を急いだ。 行っても無駄かも知れない。 今日未来に戻れなかったら飛び出した頓所にも帰れないのに、夜はどうするの? これから先は? 中途半端に生温い風が頬を撫でる度に、冷静なあたしが早まったあたしに問い掛ける。 進めば進むほどに日は落ちて、あっという間に夜が訪れた。 あーお寺がある…ヤダな… 昔のトラウマで幽霊の類いにはやたら敏感に反応してしまう。 懐中電灯すら必要のない場所にいた自分が、どれだけ恵まれていたのかを思い知った。 少し経つと所々の家に提灯がぶら下がったけど良く言えば情緒があるし、悪く言えばぼやけた明かりが恐怖感を煽った。 こんな時に何故かひとつのフレーズが浮かぶ。 『帰りたーい、帰りたーい、あったか○○○が待っているー』 ある建築会社のCM曲だった事を思い出し、誰もいない自分のアパートを思い出した。 あたしが未来から消えて、時間の流れはどうなってるんだろ? 『平助』と入れ違いになってるんだったら、止まってくれてる訳ないよねえ…家賃とかその他諸々の払いモノはどうしよう… 滞納などして孤児院に連絡が行くのは、大変良ろしくないのだ。 、
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