色魔退散!

32/35
前へ
/412ページ
次へ
都合のいい話しかも知れないけど、蓮司が気を利かせて家賃払ってくれないかなーとか、もし『平助』があたしのいた時代に行ったのなら、あたしの代わりに住んでてくれないかなーとか、勝手な願いをしてみる。 後者の場合の家賃は誰が?となると、やっぱり蓮司の財布になる訳だけどね。 集中して考え込んでいる分には、闇夜の恐ろしさも少しは薄らいでいた。 何とか池田屋に辿り着くとそこには松明が焚かれ、出入口にお侍さんが二人立っていて… ああ、そうか。 事件が起きたのはまだ昨日の話しだし、殺人現場だから立入禁止なんだ。 中は血だらけのままだろうし、一人で入らせて貰うのも勇気がいる。 でもせっかく頑張って来たんだし、せめてあたしが突然放り出された場所を調べてみたい。 「あ、あの」 細い目付きの丁髷と、ガサツそうなロング揉み上げの男に声を掛けてみた。 「あ?何だチビ。」 ロング揉み上げが肩を揺すりながら数歩近付く。 明らかに見下して言ってるけど、あたしは女だからチビって言われても腹は立たないし、わざわざお生憎様だ。 「すみません、中を見せて貰いたいんですけど…」 「何馬鹿言ってんだテメエ。ガキが寝ぼけた事吐かしてんじゃねぇ、とっとと帰れ帰れ。」 シッシッ! 犬や猫を追い払う仕種で軽くあしらわれてしまった。 、
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2281人が本棚に入れています
本棚に追加