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全ては瞬きする間もないほど、一瞬の出来事だった。
前方に飛び出したあたしの目の前に、揉み上げの持つ刀が斜めに振り下ろされる。
ガッ!
ギインッ!
触れた途端に響く鈍い金属音が二つ。
頭上には重なり止まったままの刀が何故か、三本。
もう一人…片手で軽々と受け、半分だけこちら側を向いていたのは笑顔の総司さんだった。
「誰だ、てめえはっ!用のねえ奴はすっこんでな!!」
邪魔をされてがなる揉み上げ。
それでも余裕たっぷりの総司さんは、体格差をものともせず自分一人で押し返して離れた後、緊迫感のない声でこう告げた。
「何だと言われましてもね…新選組の沖田と申しますが、何か?」
「新選組だあ!?」
「沖田!?」
名乗った途端に男達は顔色を変え、焦った様子で数歩下がった。
「ちなみにあなた方の言うそこの可愛い子ちゃんも、うちの隊士ですよ。ねえ…平助?」
茫然と成り行きを見ていたあたしに、揉み上げと細目が視線を向けた。
『驚いた』というより『え?こんな奴が?』って疑いの感情を孕んだ眼。
…うん、そうなるよね…。あたしも当事者じゃなかったら、同じ反応してるよ…
苦笑いしながら返答に躊躇すると総司さんは勝手に続けた。
「一部始終見てましたから騒動の発端や理由は聞くまでもありません。」
--最初っから見てたんかいっ!
多分あの時、呼び止める声をシカトして逃げたあたしの後を、こっそり尾行してたんだろうけども。
傍観者の中に総司さんが紛れていたのは正直、面白くない。
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