天衣無縫(テンイムホウ)

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「シ、シタがるって…まさか…」 二人して見つめ合い、お互いに薄明かりでもバレバレの、熱で火照った顔を見た。 「誰かに…何か、されたんです、か…?」 「う、あー……キ、キス…された、かな?」 「き、きす…って何ですか?」 そう言えば昔はキスって言わないんだっけ… 改めて説明するのは、二十歳になっても恥ずかしいもので。 「えと…口と口がね、こう…」 左右の人差し指をピンと立てて、二本の指の腹を『チョン』とくっつける。 「…口づけ、は誰が?」 「そっか、口づけって言えば良かったの…か…」 …何かそっちの言い方のがやらしーな… だけど、口づけしたのが『誰か』だなんて、わざわざ答えたくもない。 黙る事で拒否ると、総司さんはもう聞いてこなかった。 変わりに、 「私の話しをしましょうか。」 と言って、微笑みながら左手を差し延べあたしの左手を握る。 徐に歩き出そうとした所に一度振り返って、 「すみません、右は空けておきたいので。雅さんも右手は常に刀を抜けるよう、空けておいて下さいね?」 と、申し訳なさそうに言い前をゆっくり歩き始めた。 前後での手繋ぎはそこまで苦じゃなくて、今度はすぐ目の前でポニーテールが揺れているのを眺める。 すると、 「…平助は好きだと答えましたけど、雅さんの考えるような…いかがわしい気持ちではありません。」 と静かに話し出す。 、
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