天衣無縫(テンイムホウ)

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今すぐ左之さんと新八さん、戻って来ないかな‥‥ 祈るように耳を澄ませたけれど、聞こえて来るのは夜風が草木を揺らす音と、家々から洩れるごく僅かな話し声だけ。 ‥‥‥‥んん? お寺の前の通りを歩いている時、おかしな事に気が付いた。 ‥‥‥をや?‥‥何で総司さんの足音がしないの? だけど気配というか存在感みたいなのは、後ろからビシバシ感じる。 剣客って‥‥足音だけじゃなくて、気配も消すでしょ普通。 にわか知識で首を傾げていると、もう屯所が見える距離まで帰って来ていた。 ここまで来といて何だけど‥‥山崎さんに会いたくねェー。 近付けば近付くほど歩みは遅くなっていく。 そんなこんなでいつの間にか真後ろには、亀歩きの総司さんが物言いたげにゴホゴホと咳払いをしていた。 「な、何よ?先に行けばいいじゃん。」 端に寄って道を譲ると、あたしを気にした困り顔の総司さんが立ち止まった。 「‥‥さっきのアレは謝りますから、せめて私に‥‥あなたを守らせては貰えませんか?」 、
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