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正直、ガッカリさせて欲しかった‥‥と思ってしまったあたり、あたしは相当嫌なヤツだ。
彼の想いは本物かも知れないのに、どちらも傷付かないで済む言い訳を探している卑怯者。
詰まる所、自分が原因で他の誰かが傷付く姿を見て、罪悪感を背負いたくないのだ。
いつからこんな弱い人間になったんだろう‥‥
非現実で特殊な環境が、これまで培(ツチカ)って来たもの全てをじわじわと破壊し、別の人格に塗り変えられていくような不気味さと不安が、心を締め付けていた。
『もしかすると事故に遭った時から、夢を見続けているのかも知れない』
そんな逃げ場でも今のあたしには必要で、例えるならば希望と絶望が天秤の上で揺れ続けているかのような状態だ。
そのバランスが崩れどちらに傾くのかは解らないし、自分の命ですら選択権が無いこの世界はある意味『自由』であり、もう一方では『地獄』だとも思う。
「‥‥ねぇ総司さん。気持ちはさ、嬉しいんだけど‥‥その‥‥ごめんね?」
一応申し訳なく思うのは、下心が有ろうと無かろうと悪意だけは感じなかったから。
「謝らないで下さい。自分勝手な気持ちを押し付けているのは、私の方なんですから。‥‥確かに出逢ってまだ一日しか経ってませんし、疑われても仕方のない事だと思います。‥‥こちらこそすみません。競争率が高くて、ちょっと‥‥いえ、だいぶ焦ってしまいました。」
苦笑いを浮かべながら頬を掻く仕草に、少し胸が痛む。
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