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また、『平助』と比較した。
それもあたしにとってはプレッシャーだし、捻くれる原因なのに。
女である事を隠せと言われたり、人を殺す事なんて出来ないって解ってるくせに、組長なんて上役のポジションに置いたりなんかして。
あたしのいた世界じゃない場所で、あたし以外の他人を演じろと言う。
それじゃあ、生きている『あたし』は何処にいるの?
あたしの存在は過去にも未来にもないの?
好きだって勝手に気持ちを押し付けるばかりで、あたしの想いなんてちっとも‥‥っ!
「‥‥‥うっ、」
きっとこれは何度話し合っても解って貰えない。
だって当事者はあたし1人で、所詮この人達は真っ赤な他人なんだもん。
嫌な気持ちになって心が痛むのも、あたし1人の問題なんだ。
向こうのあたしはどんな辛い現実にも耐えられたのに、ここで目の当たりにした非力さが我慢の糸を引きちぎった。
「っ‥‥嫌い‥っ、‥‥皆、大嫌い‥‥うっ、ひっく‥‥」
「ええ!?な、何でいきなり!?私、今泣かせるような酷い事言いましたか!?」
手の甲で拭っても拭っても溢れ出す涙は、まるで決壊したダムのようにただ低い所へ流れていった。
「‥‥ふっ、‥‥ううっ、れ、れんっ、蓮司ぃーーっ‥‥‥うわああああぁぁぁーーーーんっ!!」
ただ、悲しかった。
あたしが本当は何処にもいてはいけない、生まれて来ちゃいけなかった命のような気がして。
世界から忌み嫌われたった1人、例えようもない孤独と戦わなきゃいけない理由は何?
母親が突然蒸発した時よりも恐ろしくて、狂いそうな程に苦しくて辛い。
縋る誰かがいるとするなら、あたしには蓮司達しかいないのに。
「みや、ーー平助っ!」
泣き叫ぶあたしを乱暴に抱き寄せた総司さんが、口を塞ぐように胸板へ顔を押し付けた。
「やめ‥‥っ、うっ、‥‥あたしはっ‥‥!‥‥平助じゃ、な」
「どうかされましたか!?」
抵抗したのと同時に、慌ててかけて来たのが屯所の門番である事に気付いた時、総司さんは庇ってくれているのだと頭では理解出来ても、壊れかけた心がそれを許さない。
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