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目が覚めたのは多分夜中。
薄っすらぼんやりと揺らめく炎の明かりが、天井に影の波を作っていた。
最初に気付いたのは手を伝わる温かな感触で、大きなモノに包まれているようだった。
それは片手だけじゃなくて両手が同じ状態で動かないから、拘束されているのかと一瞬ドキッとしたけど、左右を見て妙な気持ちに変わっていった。
「‥‥左之、さん‥‥‥‥新八さ‥ん‥‥」
両隣りに寄り添うように眠る巨体は、うつ伏せだったり肩肘付いたりして少し鼾をかいている。
‥‥これじゃ寝返りも打てないよ‥‥
あたしの手を強く握ったまま雑魚寝してる二人を見ていると、涙がジワリと浮かんできた。
何であたしがこうやって寝かされているのか、涙が端から横へ流れ出した時に漸く思い出した。
みっともなく泣き喚いて総司さんに気絶させられたんだっけ?
「いてて‥‥」
首を僅かに動かすだけでも相当痛い。
手に負えないと判断して咄嗟に首を殴ったんだろう。
手刀‥‥って言うんだよね、あの技。
あんなの時代劇やドラマの中だけのものだと思ってた。
こりゃ、痣になるかな‥‥
醜態を晒した恥ずかしさよりも余計な心配が先に過ぎったのはきっと、繋いだ手から感じる体温のせいだったのかも知れない。
二人があたしの名前を呼んで懸命に探してくれてた。
それがどんな気持ちからであっても、嬉しかったんだ。
一度堰を切った涙は、後から後から耳まで落ちてゆく。
鼻が詰まり耐え切れず小さく啜り上げた時、右手がピクリと動いた。
「‥‥ん、‥‥あ、雅‥‥起きてたのか‥‥?」
手を離す事無く起き上がり、あたしの涙を自分の袖口で拭いてくれる。
「痛みはどうだ?」
その声は静かだったけど心配しているというより悲しそうに聴こえて、酷く申し訳なく思った。
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