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いつからこんなに強欲になったんだろう?
そんな疑問も、
「ぱっつぁん、離せよ。雅が潰れっちまうだろ。」
「いんや、お前が離せばいいじゃねえか。」
喧嘩しながらも仲がいいこの二人を見ていたら、答えは自ずと出てしまっていた。
‥‥『此処に来てから』だ。
今迄のあたしと此処でのあたし。
何が違うって‥‥この人達は最初から遠慮無く、馴れ馴れしいくらいに優しかった。
そうするのが当たり前のように。
だから『あたしは平助じゃない』って反発しながらも、きっと心の片隅で喜んでる自分がいたんだ。
もしも一人ぼっちにされなかったら、孤児院へ行かずに済んだらこんな風に、沢山の仲間や友達が出来たんじゃないかって淡い期待や希望を抱いていた。
殺し合う事もある時代だから不慣れな自分は死ぬかも知れない‥‥と恐れながら、『仲間』なんて偽りの立場でも気にかけてくれる事を密かに望んでいたなんて。
隠れていた薄汚い願望を直視出来ずに、何度も奥へと閉じ込めていたんだ。
唯一の『仲間』と呼べた蓮司達ですら、今は遠い未来にいる。
どんなに虚勢を張っても、寂しいものは寂しい。
一人ぼっちは嫌だ。
こんな訳の解らない時代に飛ばされて、孤独感は更に増してゆくばかり‥‥
「‥‥羨ましい‥‥」
「「あ?何か言っ」」
まだいがみ合いを続けながらあたしの手を離さない二人。
その手を引き寄せ胸の前でくっ付けた。
あたしの手の中に豆ダコや傷だらけの大きな手が二つ、包み込まれる。
この人達が長い年月、一生懸命稽古を積み重ねてきた証。
池田屋であたしを庇った新八さんの手には、まだ血の付いた包帯が巻かれたままだ。
「何でもないよ‥‥」
ピッタリと密着した三人の手に額を付けて、目を瞑った。
「‥‥どうした?」
「首が痛むのか?」
左之さんは顔を覗き、新八さんはそうっと項に触れてくる。
優しい気持ちが、ね‥‥?
「‥ううん‥‥くすぐったいだけ‥‥」
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