天衣無縫(テンイムホウ)

21/42

2279人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
優しくするのもされるのも慣れていないから‥‥ 「イテッ!」 弾かれたような声と項から離された手。 どうやら左之さんが新八さんの手を抓り上げた模様で。 「どこ触ってやがる。」 「他意はねえ、純粋に心配してんだよ。‥‥見てみろ、こんなデカい痣こさえちまって。」 首筋の髪を撫で払ってから、またさわさわと触れる。 「やぁ」 思わず声が漏れたのは擽ったいというより、ゾクゾクする感じがしたからだ。 「だから止めろって。女の首筋を無闇矢鱈に弄ってんじゃねえっつってんだ。」 「イテッ!またかよ!」 繰り返される言動はワザとなのか天然なのか。 二人のやりとりは未来で言うなら、漫才師みたいだと思った。 「ふふっ、ホント二人は‥‥仲が良いんだね。」 分かり合えた親友、そんな感じだ。 私が呟いた後、一時‥‥間が空いて。 そしてまた、同時抱擁のプレス状態に陥った。 「ムガッ、ちょ、何す」 「うん、もう滅茶苦茶可愛いってーの。」 「あーあれだな、食っちまいたくなるってヤツ?」 ええ!?食われちゃうの!? おしくらまんじゅうよりもギュウギュウに板挟みにされ、慕われてるというより圧迫死寸前だ。 「く、苦しっ、もう、ヤメて‥‥」 酸素不足で喘ぐと二人の力はピタッと止まり、 「やっべ‥‥効いた。」 「俺も。」 「にゃあ!?」 少しだけ動いたと思ったら、項に。 項に二人の息がかかり、生温かい『何か』が触れる。 途端に背筋にゾワワッて変な痺れが走った。 「ひゃ、やっ」 「怖がるなよ。早く良くなるように、おまじないだ。」 「今はまだこれくらい、だな。」 おまじない?これくらい? ぽわんとした意識の中で囁かれた意味深な言葉。 でも、それを考える暇も無く‥‥ 「こらあっ!てめえら何やってやがる!!」 バッシイイイーーーーン! 鼓膜に響いたのは、障子が物凄い勢いで開けられた音だった。 、
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加