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「いや、何も?」
「気のせい気のせい。」
シンクロしてる二人の動きは全く同じで、両手を上げて声の方へと振り返る。
「嘘つけこの野郎、外まで筒抜けだ馬鹿もんが。」
「あ」
威嚇するかのようにわざと足音を大きく立てて近づき、腕を引いて抱き寄せられた。
「‥‥取り敢えず大丈夫そうだな。風呂、入れるか?」
あたしには見えないけど土方さんも首の痣を確認して眉をしかめたって事は、相当目立つ跡が残ってるんだろう。
「うん、ベタベタして気持ち悪いよ。早くお風呂入りたい。」
空元気で答えると、
「だろうと思ってな。昨日から『風呂風呂』煩かったし。」
そう皮肉って少しだけ笑ってくれた。
「副長自らお迎えかよ。」
「まさか一緒に入ろうってんじゃないよな?」
「ぶぁか。てめえらの脳味噌には筋肉が詰まってんだろ?」
バッサリと斬り捨て一瞥くれてから、あたしの手を引き歩き出す。
「あ、着替え」
「おいてめえら、平助の着替え持って来い。」
「へいへーい。」
「雅、気ィつけて入って来いよ。」
ヒラヒラと手を振る左之さんと新八さんは、早速箪笥の中を漁りだした。
移動する間に伝えられたのは、あたしがお風呂に入ってる時は清掃中って事にして、その近くで井上さんておじさんと山崎さんが見張るというもの。
山崎さんに頼るのは気が進まなかったけど、背に腹は代えられない。
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