2279人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
確かに昨日の夜も総司さんの膝に乗った。
感触……と言うか座り心地をね、何と無く覚えてるんだ。
「あ、あの、自分で出来るから」
首を捻って見上げれば、そこにある笑みが限りなく優しくて……
包み込むような大きな身体と、髪に触れる滑らかな動きを懐かしいと感じた。
だからかな…目の錯覚でダブって見えてしまったの。
幼い頃の記憶に眠る、大好きだった人の姿と。
『……お母、さん……』
言葉は飲み込んだ。
なのに…
不意に零れ落ちる涙。
ビクッと手の動きが止まって、総司さんの顔が強張った。
「……すみません、嫌、でしたよね……」
それはすぐに苦笑いに変わって、ゆっくりと膝から降ろされた。
「ち、違う…っ」
傷付けるつもりだったんじゃない。
自分でも良くわからないでいる。
この涙の訳を。
だってあたしはお母さんを恨んでて、楽しかった思い出も全部憎しみに変わったハズだったんだよ。
だけど、どうして……
「ま、待って!」
立ち上がり離れようとする総司さんの背中に縋り付く。
「違うの!違う!あたしが……ううん、あたしにもわかんないんだよ!ごめんっ、絶対総司さんのせいじゃない!違うんだよっ!」
支離滅裂に叫びながら、逞しく広い背中に額を擦り付けていた。
回した自分の手を強く握って、思いがけず傷付けてしまったこの人を逃がさないように。
でも総司さんは黙ったまま動かなくて……
また別の涙が溢れて来そうになった時、後ろから別の手があたしの頭を撫でていた。
「違うって言ってんだろ。片意地張んなよ、総司。…余計泣いちまうぞ。」
、
最初のコメントを投稿しよう!