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そして、背中にも感じる熱い体温。
「泣かせたくないんだろ?」
「……はい。」
頭の上から優しい声色が降って来る。
「…雅さん?」
繋がっていた手を解かれ、少し照れた総司さんが振り向いて微笑んでくれた。
「ごめんね、ちょっぴり昔を思い出しただけで…」
鼻を啜って笑いながら話すと、
「そうでしたか…私こそすみませんでした。勝手に早合点してしまって…」
謝りながら仲直りのハグをされる。
…良かった、ちゃんと誤解が解けて。
素直に喜び、土方さん同様とても温かい胸板に寄り添った。
三人して言葉無く抱き締め合って友情を深めて…、アレ?
もうそろそろ離してくれてもいいのでは?
ーー説明しよう。
あたしが真ん中でサンドイッチ状態な訳だけど……全く、全くね、動けないんですよ!?
抱き締められているのはあたしなのに、この二人…お互いのゴツい身体も抱き締め合っているようで、ぎゅうぎゅうされて暑苦しくなってきた。
「…お腹空いたなぁ…ご飯食べたいなぁー…」
小さくポツリと呟いて脱出を試みたものの、
「あー、そういやお前朝飯もロクに食ってねえな。昼は?…何?食ってねえのか?チッ、山崎のヤツ…あれほど面倒見ろっつったのによ。」
「夕餉も食べてないでしょう?雅さんの分は源さんがとってくれてますけど…今から食べますか?」
会話はしても力を緩めてくれる気配は無く。
ちなみに山崎さんはうどんを奢ってくれたけど、今は本当の事を話してやる気にはなれない。
ふふふ…山崎め、悪人になっておくがいいさ。
「た、食べる!食べます!食べたいです!腹ペコなんです!」
早口で必死こいて訴え解放の時を待つ。
なのに何故引っ付き虫のまま?
一向に進展しない事態に苛立ち、何とか頭を動かして上を向く、と。
さっきまで仲良しこよしだった二人が、ガン飛ばし合って額をゴリゴリ擦り付けていた。
「…おめえが取って来い。」
「イヤですよ。」
「雅が夕餉食いっぱぐれたのは誰のせいだ?」
「山崎さんでしょ。」
「じゃ言い方変えてやる。寝込ませたのは誰だっつってんだよ。」
「それは…私ですけど、…ズルいですよ土方さん。今は関係ないじゃないですか。」
「そうかぁ?朝昼まともに飯食ってねえなら、夕餉はさぞ楽しみだっただろうになぁ?気絶してさえなきゃ今頃は腹一杯食えてただろ。あー、雅が気の毒だ気の毒だ。」
「っ…わかりましたよ。」
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