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「水か…。おい、飲み水どっかで仕入れて来い。それから桶に水入れて此処まで運べ。俺は後から手柄を取りに来る、馬鹿共を止めなきゃならん。近藤さんも指揮を取りに戻ってくれ。それがアンタの仕事なんだからな。」
他の人に命令しているこの男は偉い人なのか、言われた通りに男達は散ってゆく。
名残惜しげに近藤さんて人は、倒れてる男の名前を呼んだ。
「総司、頑張れ。…藤堂君、頼んだぞ。」
そしたら総司って人の閉じていた瞼が、ピクッて動いた。
あたし、藤堂君でも平助でもないんですが…。
この人を助けたい気持ちはあるんだけど、まわりは多分この人が殺した死体だらけで…矛盾してる気がする。
「…はい。」
強い目で見つめられると、そう答えるのが精一杯だった。
「斎藤、お前は残れ。残党がまた戻って来る可能性もあるからな。こいつらを護ってやってくれ。」
「承知した。」
そんな会話がされ、死体以外に生きてる人間は私達三人だけになった。
「水、遅いなぁ。ここにいるより外で夜風にあたらせた方がいいのに…。」
愚痴を言いながら腰の帯を解いて緩め、上の着物を脱がせた。
返り血でべたべたする着物を触ったから、誰の物か解らない血が手について気持ちが悪い。
「なんか扇ぐ物は…、あっあった!」
薄明かりの部屋には死体だけではなく、いろんな物が散乱していて…。
それらの中には扇子が数本落ちていた。
きっとこの部屋が蒸し暑くて、使っていたんだと思うけど…なんだろう…。着物に刀と丁髷、扇子に…あれ灯籠…だっけ?
なにもかもが古い。
これって…。
昔の時代じゃないの?
、
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