天衣無縫(テンイムホウ)

32/42

2279人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
四面楚歌は辛いモノ。 だけど、好意を持たれて囲われたこの状況は… 『四面胸板』 新四字熟語が完成した瞬間だった。 ーーー男臭い! じゃなくて、恥ずかしさの中に鬱陶しさも有り… 「ちょっ、あんた達、ちょい待って!何でスクラム組んでんの!?おかしいでしょっ、ねえってば!」 辛うじて中央に空いた穴を見上げ四つの顔に訴えると、 「すくらむ?何だそりゃ。」 「未来の言葉なんじゃないですか?」 「あー成る程、って、和んでる場合じゃねぇ。おめえら離れろ気色悪りぃ。雅が飯食えねぇだろうがよ。」 「んな事言って自分だってまだくっついてんじゃねぇか。あんたらコソコソと何やってたんだよ?」 「特に何もしてませんけど強いて言うなら、土方さんが雅さんを独り占めしようとして、わたしがそれを阻止していただけです。」 「あ?違えだろ?おめえが雅泣かしたんだろうが。」 「なにぃ!?総司てめえ、よくも泣かせやがったな!」 「暴力だけじゃ飽き足らず今度は泣かせたのか!?お前本当に最低だな総司!」 「土方さーん、余計な事言わないで下さいね。誤解は解けたんですから…ねえ、雅さん?」 「……………。」 ーー散々だ。 散々自分らの好き勝手喋くって、お風呂でやっと綺麗にした人の顔に唾撒き散らしといて…何吐かしやがんだ、このアホ共は。 しかも密着され過ぎて中の空気、めっちゃ薄いんですけど!? ツンと顔を背ける事すら出来ず、無反応で知らんフリしてやると、 「…まだ怒ってるんですか?」 シュンとした声が胸に響く。 もうヤダ…エンドレスばっかり… とにかく皆離れて欲しい。 どうかあたしに、ご飯を食べさせて下さい… 「…怒ってないけど、いい加減離れないとキレちゃうかも。」 低い声で呟くと、皆は何故か溜息つくやら小さく笑うやら…… 「一時休戦って事でいいですか?」 総司さんの一言で四人は一斉に離れて行った。 溜息つきたいのは、こっちだっつーの。 ドッと疲れが押し寄せ、これ見よがしに盛大な溜息をつく。 落ち着いたところで左之さんが、 「取り敢えず飯食えよ。んでその後は薬飲め、な?」 机に置かれたお膳の前まで、背中を押して連れて行ってくれた。 、
/412ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2279人が本棚に入れています
本棚に追加