2279人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
皆の視線に晒されながらも豪快に食べ尽くした後は、この世のものとは思えないほどの苦い粉薬を飲まされて、せっかく美味しく頂いたご飯をリバースしそうになった。
「な、何コレ…」
口に残った後味の悪さに手で押さえて堪える。
「吐くんじゃねぇ、打ち身に効く薬だからな。」
「石田散薬って言うんですよ。土方さんのお勧めです。」
「まっずいんだよなー、ソレ。」
「うるせえ、良薬口に苦しだ。」
「苦いだけなら我慢もするが、クソが付く程不味いんだよ。」
「なにぃ?」
新八さんの正直な感想に、土方さんは一気にご機嫌斜めだ。
「まあまあ、飲めばマシにはなりますから…今は痛みませんか?」
仲裁に入った総司さんは、申し訳なさそうに項に触れた。
驚いて肩がピクリと跳ねる。
「あ、うん。急に動かさなければ痛まないから大丈夫、だと思う。」
…あんた達が騒ぐから、今まで痛みも忘れてたよ。
自分が走り回っていたのは、都合良く棚に上げておく。
……って、いつまで触ってんだ?
くすぐったくて身を捩ると、そこには真っ直ぐな瞳があたしを捕らえていて。
「…本当にすみませんでした。今日はもう部屋に戻ってゆっくり休んで下さいね。」
限りなく優しい声色で、さり気に手を掴む。
「ていっ!」
その手を素早く叩き落とした新八さんが間に割って入り、背後からは左之さんがあたしの両肩を支えた。
「「油断も隙も無い!!」」
「全くその通りだな。ほら、空いた膳はお前が片して来い。」
二人がハモった直後総司さんに突き付けられたのは、あたしが食べた後のお膳だった。
「や、それは自分で運ぶよ。源さんにお礼言いたいし。」
、
最初のコメントを投稿しよう!