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慌てて受け取るつもりがヒョイと交わされ、
「じゃあ、一緒に返しに行きましょうか?」
片手でお膳を持って、空いた手で懲りずにあたしと手を繋ぐあたり、実はどうして中々いい性格してると思う。
「おめえなぁ!」
「離せっつってんだろ!」
噛み付くように吠えられても、
「えー?雅さんが嫌だって言うならすぐに離しますけどー」
いけしゃあしゃあと言い放ち、あたしの顔を覗き込む。
「……嫌、ですか?」
不安そうに見つめる表情が妙に可愛らしくて、目の錯覚か頭に犬の耳が生えていた。
ーーーくっ、捨て犬みたいな目で見るな!
母性本能が自分にも備わっていたのだと、認めざるを得ない。
「…嫌じゃないけど…皆が見てるし……あたし一応『男』だから、こういうの変だよ…ね?」
「ほらなー!よっしゃ、良く言った!」
やんわりと断れば、拒否った事に新八さんはガッツポーズで喜び、左之さんは深く頷く。
頑張ったあたし、偉い!
明らかに好意を持っている相手に対して、如何に物腰柔らかく断れるか……キツい物言いが多いあたしにしては、かなり気を使った方だし上出来だ。
なのに、一向に離れる気配のない大きな手。
総司さんはと言えば、ちょっと考え込んでいる風だし…
「ああ、成る程。」
その一言の後、繋いだ手を離されたもんだからやっと通じたとばかりに思っていたら、
「わかりました。今度からは二人っきりの時に繋ぐよう注意しますね。」
眩しいくらいの爽やかスマイルが返って来た。
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