2279人が本棚に入れています
本棚に追加
/412ページ
止めるのも聞かずズンズンと進んで行くもんだから、コンパスの差がある分あたしだけが小走りになる。
「何処行くの!?」
「言いましたよね?山崎さんのとこです。」
突き放す物言いが、総司さんの拗ね具合を物語っていた。
ーーーやっぱ面倒臭い男だな!
だけど本当の理由を話しても、今より悪い方へ転がるに決まってるから絶対に話せないし。
「何もされてないから……ねえってば!待ってって!!」
「何もないなら、そんなに焦らなくてもいいでしょう。」
やっと追い付いて着物の背中を掴んでも、力任せに進んで歩みを止めなてくれない。
またあたしのせいで山崎さんと総司さんが喧嘩するのは嫌だし、おパンとブラの話しをバラすのはもっと嫌だ。
…どうすればトチ狂ったこの馬鹿チョンを止められるの!?
まだ出会って間無しのこの人の中身を知らないから、どう誤魔化せばいいのかわからなくて…結局…
「……やめてって言ってるのに!」
最低最悪の禁じ手を使う。
「ーーそんな総司さんなんて、大嫌いだからね!」
「なっ…!?」
後ろから思いっきり抱きついて、泣いた振りの演技をぶりっぶりにかましてやった。
「…酷いよ、誰にだって知られたくない事くらいあるのに…」
「ぅ…ぁ…いや、でもですね…」
立ち止まりしどろもどろしているということは、ラッキーな事にこんな大根芝居でも間に受けてくれたらしい。
、
最初のコメントを投稿しよう!