天衣無縫(テンイムホウ)

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止めるのも聞かずズンズンと進んで行くもんだから、コンパスの差がある分あたしだけが小走りになる。 「何処行くの!?」 「言いましたよね?山崎さんのとこです。」 突き放す物言いが、総司さんの拗ね具合を物語っていた。 ーーーやっぱ面倒臭い男だな! だけど本当の理由を話しても、今より悪い方へ転がるに決まってるから絶対に話せないし。 「何もされてないから……ねえってば!待ってって!!」 「何もないなら、そんなに焦らなくてもいいでしょう。」 やっと追い付いて着物の背中を掴んでも、力任せに進んで歩みを止めなてくれない。 またあたしのせいで山崎さんと総司さんが喧嘩するのは嫌だし、おパンとブラの話しをバラすのはもっと嫌だ。 …どうすればトチ狂ったこの馬鹿チョンを止められるの!? まだ出会って間無しのこの人の中身を知らないから、どう誤魔化せばいいのかわからなくて…結局… 「……やめてって言ってるのに!」 最低最悪の禁じ手を使う。 「ーーそんな総司さんなんて、大嫌いだからね!」 「なっ…!?」 後ろから思いっきり抱きついて、泣いた振りの演技をぶりっぶりにかましてやった。 「…酷いよ、誰にだって知られたくない事くらいあるのに…」 「ぅ…ぁ…いや、でもですね…」 立ち止まりしどろもどろしているということは、ラッキーな事にこんな大根芝居でも間に受けてくれたらしい。 、
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