奇跡は突然やって来る。

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扇子を二本拾って、斎藤という人に渡す。 「…これは?」 「下も脱がせて扇いであげてくれますか?」 いくらなんでも男の下半身の服を脱がせるのは、抵抗があるもん。 「承知した。」 この人は素直な性格なんだろうな…と思った。 だって何にでも『承知』ばかりで拒否らないし。 手慣れた感じで足袋を脱がせているのを見ていたら、外がまた騒々しくなった。 内容ははっきりとは聞き取れないけど、多分さっきここで指示を出してた人の声も混じってる。 止めなきゃいけないって言ってたっけ。 …誰を? 視線を窓枠から斎藤さんに戻すと、袴は脱がせたみたいだけど、その手は褌にまで伸びていた。 「ぎゃあ!?それは…ふ、褌は取らなくていいから!」 「ぎゃあ?…承知した。」 聞き分けの良い斎藤さんにホッとして、再び一生懸命扇いでいたら足音が聞こえて、部屋に桶と竹筒を持った人が入って来た。 「組長!水を持ってきました。」 水の入った桶をあたしの傍に置いて、竹筒を渡す。 …竹筒って…まぁ今更古風過ぎとかツッコんでも、しょうがないか… 組長って斎藤さんかな?まるでヤクザみたい。でもさっきの人の方が偉そうだったのに…まだ上の役職があるかも? とかチラッと過ぎったけど、今は先にやる事がある。
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